懐メロ

この年になると、懐かしい曲を聞いたりすると、そのときの情景が瞼に浮かび、どことなく切ない気持ちになり、もう戻れないあのときをしばらく思い出すことがある。

「昔は良かった。」などと心のどこかで思っているから今、切ない気持ちになるのか、やり直したい過去を清算したいと思うからなのか。

だがこのやり直したい感情、小学生のとき、1年生からもう一度やり直してみたい、とか、大学卒業のとき、もう一度高校生ぐらいからやり直してみたい、という遊びや勉強、恋愛などをやり残したと思ったときの気持ちとは違う。

あの頃の浅はかさを思うと、リスタートを切りたい自分がそこに居る。

現状には満足しつつも、経過には満足していないということなのである。

そんなことを思いながら、今日もラジオやテレビから懐かしい曲が流れるのをどこか期待している。

そう、この年になっての発見は、懐メロの楽しさを知ったことである。

懐メロを聴きながら、成長し年老いていく自分から逃避する感覚が何とも言えず心地よいのである。